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コラムVol.31 自分の考えを上手に伝える方法【後半】

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コラムVol.31 自分の考えを上手に伝える方法【後半】

 はじめに

 前回のコラムではアサーションとは何か、またアサーティブな自己表現とはどのようなものかについてお話しました。今回はアサーションに役立つスキルについてご紹介したいと思います。このスキルの中には、今までのコラムでご紹介したものも含まれていますので、ぜひ振り返ってみて下さい。

目次

1.自分の見方をポジティブに・・・リフレーミング

 みなさんは自分の性格はどんな性格と考え自分に対してどんなイメージをもっていますか?

今までの経験や自分に対する周囲からの評価を受け入れることで、自分のイメージを作ってしまうことがあります。

非主張的な言動をするときには、自信がない自分や不安な気持ちを隠している場合があります。そのため、アサーティブな対応をするためには、自分に対して肯定的なイメージを持つことが大切です。まずは、自分自身を否定的に見る傾向がある人は、自分の長所について考えてみましょう。長所と短所は裏表になっています。長所がなかなか思いつかない・・・という方は、以前のコラム(リフレーミングでポジティブ変換)でご紹介した「リフレーミング」の技法で自分をポジティブに見てみましょう。

2.自分の気持ちを明確に、そしてアサーティブに相手に伝える・・・アイ・メッセージ

 こちらも以前のコラム(伝え方でがらりと変わる「アイ・メッセージ」「ユー・メッセージ」の使い方)でご紹介しましたが、「アイ・メッセージ」は私を主語、「ユー・メッセージ」はあなたを主語にした表現となります。「アイ・メッセージ」は、自分の考え・意見・感情などを“わたし”を主語にして伝えることで、相手を非難したりせずに尊重しつつも、自分の気持ちや伝えたいことを大切にしたコミュニケーションとなります。逆に「ユー・メッセージ」は、”あなた“が主語になることで、命令形になってしまい相手を非難するニュアンスが強くなってしまいます。

(例) アイ・メッセージの時・・・・私はあなたにもっと急いでほしいです

    ユー・メッセージの時・・・急いで!

アイ・メッセージで自分を表現する練習をすることで、自分の気持ちや考えをつかむことにも役立ち、相手を尊重しながら自分の気持ちを伝えることができるアサーティブな自己表現にも繋がります。

 

3.非言語によるアサーション・・・非言語的コミュニケーション

 サッカーやバレーボールの試合で、相手に悟られないようにジェスチャーやアイコンタクトで仲間と合図を取り合っている場面があると思います。表情、ジェスチャー、アイコンタクト、話す速度やトーンなど、言語を使わないコミュニケーションのことを「非言語的コミュニケーション」と言います。

 人は言葉だけでコミュニケーションを取るわけではありません。アメリカの心理学者の研究では、話の内容や言葉の意味を示す言語の情報よりも、声のトーンやジェスチャーなどの聴覚や視覚情報の方が印象に残るということが分かりました。これは「メラビアンの法則」と言われています。メラビアンの法則によると情報が相手に与える影響は、聴覚情報や視覚情報といった「非言語的コミュニケーション」が90%以上となっています。

 非言語的コミュニケーションも使い方によっては非主張型、自己主張型(攻撃型)、アサーティブ型にもなりますので、声のトーンや大きさ、ジェスチャー、目線など言葉以外でもアサーティブに表現してみましょう。

4.問題解決やものごとを整理するときに役立つスキル・・・DESC法

DESC法は「問題解決のためのアサーション」とも言われています。前もってセリフを組み立てておくのが特徴で、状況を考えながら自分で提案するアサーションの基本とも言えます。

 DESC法は①describe(模写する)②express(表現する)③specify(提案する)④choose(選択する)の頭文字を取っており、下記の図のように①~④のステップに沿ってセリフを考えていきます(状況によってセリフの順番を変えることもできます)

例を参考にDESC法で考えてみましょう!

(例の状況)同僚のAさんは最近残業が続いていて、表情も暗く疲れた様子です。上司も仕事が忙しくAさんの残業が続いていることに気が付いていません。

コラム用画像_202304_2.jpg
図DESC法 「アサーション自分の気持ちの伝え方P86を参考」

DESC法は、仕事や日常生活の中で問題解決やものごとの整理をするとき、伝え方が難しいとき、自分の気持ちなどを明確にしてから伝えるときなどに使えるスキルとなりますので、みなさんも機会があればぜひ、使ってみて下さい。

日本にアサーションを紹介した平木先生は、アサーティブに自分の考えを上手に伝えるためには、「自分の気持ちや意見をはっきりさせること、それを具体的に表現するスキルを身につけること、そして、相手の思いを理解することの3つの要素が必要」であると述べています。アサーティブな対応は、すぐには難しいかもしれませんが、自分の考えや気持ちを上手く伝えることができるように、上記でご紹介した1〜4を日常生活や仕事などで取り入れ、練習してみてはいかがでしょうか。


参考資料:平木典子著 「アサーション 自分の気持ちの伝え方」
臨床心理士・公認心理師 高橋 美千代 

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