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コラムVol.20 伝え方でがらりと変わる「アイ・メッセージ」「ユー・メッセージ」の使い方

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コラムVol.20 伝え方でがらりと変わる「アイ・メッセージ」「ユー・メッセージ」の使い方

コミュニケーションは職場での人間関係を円滑にするために、とても大切なものです。

今日はアメリカの心理学者であるトマス・ゴードン氏が「親業(おやぎょう)訓練」の中で提唱したコミュニケーション技法である「アイ・メッセージ」と、「アイ・メッセージ」に反する「ユー・メッセージ」についてご紹介したいと思います。

4月から働き始めた新入社員の方、異動で新しい部署に来られた方々は、新たな環境で働き始めて約1ヶ月が経ちました。少しずつ環境に慣れてきたとはいえ、仕事を覚える、他の方々とのコミュニケーションなど、まだまだ緊張する場面も多いことでしょう。そのような中では、どうしても些細なことでも敏感に感じてしまい、相手がアドバイスのつもりで伝えたことでも、ネガティブな方向に捉えてしまうことがあるかもしれません。また、それと同時に管理職や上司の方々も、「どのように伝えたらよいかな?」と悩む場面もあるかと思います。そのようなときに役立つのが「アイ・メッセージ」です。


目次


【アイ・メッセージとユー・メッセージとはどんなメッセージ?】

もともとは英語の表現“I message” “You message”のことで、「アイ・メッセージ」は私を主語、「ユー・メッセージ」はあなたを主語にした表現となります。

では、具体的に「アイ・メッセージ」と「ユー・メッセージ」はどのような違いがあるのでしょうか?2つの例を比べてみたいと思います。




ユー・メッセージ

アイ・メッセージ



(あなたは)何度同じことを説明したら間違えないで資料を作成できるんだ!

これは重要な資料なので、しっかり覚えて間違わないようにしてくれると(わたしは)助かるよ



(あなたは)他のスタッフとコミュニケーションが少ないから仕事が上手くいかないんだ!

(わたしは)もう少し他のスタッフとコミュニケーション取りながら仕事をすると上手く進むと思うよ

 

主語がなくても(  )の中に書かれている主語が隠されているのが分かるかと思います。①の「ユー・メッセージ」の例では、言われた側は、心の中で・・「こっちだって覚えることが多くて大変なんだよ」と思ってしまうかもしれませんし、②の例では、まだ職場の環境になれていない人は、落ち込んでしまうかもしれません。

【アイ・メッセージとユー・メッセージでの違い】

皆さんは、2つの例の違いをどのように感じられたでしょうか?相手に伝えたい内容は同じであっても、隠されている主語が「わたし」なのか「あなた」なのかによって受ける印象が違っていませんか?

「アイ・メッセージ」は、自分の考え・意見・感情などを“わたし”を主語にして伝えることで、相手を非難したりせずに尊重しつつも、自分の気持ちや伝えたいことを大切にしたコミュニケーションとなっています。

逆に、「ユー・メッセージ」は、”あなた“が主語になることで、命令形になっており、相手を非難するニュアンスが強くなっていることが分かります。これだと、自分が攻められているように感じてしまい、過剰に反応し防衛が強くなることで、コミュニケーションが上手くいかなくなってしまう可能性があります。

【メリットとデメリットを知り上手く使いこなす】

もちろん、両方のメッセージの伝え方にもメリットとデメリットはつきものです。「アイ・メッセージ」と「ユー・メッセージ」のメリットとデメリットはどのような点なのか、下記にまとめてみました。

 

 

ユー・メッセージ

アイ・メッセージ

メリット

・相手に自分の意見をダイレクトに伝えられる

・指示、命令ができる表現となる

・相手を非難しない言い方となる

・やわらかい表現で伝えられる

・相手を尊重しながら自分の気持ちも伝えられる

・相手と良い関係性を築くことができる

デメリット

・支配的になってしまう

・相手との関係性が悪くなる可能性がある

・自分がどう思っているのかなど、気持ちを伝えられない

・遠回しな言い方になる

・相手に指示、命令ができない表現となる

 

「アイ・メッセージ」は相手を尊重しながらやわらかい表現で気持ちを伝えられる分、指示・命令の言い方にはなりません。また、「ユー・メッセージ」は自分の意見をダイレクトに伝えられる反面、きつい言い方になってしまい、相手との関係性に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、会話の相手がまだ仕事の環境になれていない時期や、関係性をこれから構築する必要がある場合には、最初に「アイ・メッセージ」を使うことで、相手とより良い関係性を築く一歩に繋がるのではないでしょうか。そして、仕事の生産性とのバランスを取りながら、状況に応じて、「アイ・メッセージ」と「ユー・メッセージ」を上手く使い分けていくことが大切だと言えます。


臨床心理士・公認心理師
高橋 美千代

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