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コラムVol.40 うつ病から職場復帰した方へのサポート

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コラムVol.40 うつ病から職場復帰した方へのサポート

はじめに

 現代はストレス社会と言われており、メンタルヘルスの不調からうつ病を発症してしまい会社を休職せざるを得ないスタッフの方が皆さんの職場でもいらっしゃるかもしれません。休職されていたスタッフの方が復帰した場合、「どのような声がけしてあげればよいのか」「どのように気遣ってあげればよいのか」と、迷ってしまうことはありませんか。今日は、職場復帰されたスタッフの方への接し方についてお話したいと思います。


目次

1.まずは知っておこう

実はうつ病は特別な人がかかる病気ではなく、誰でもかかる可能性があります。そして、治療の3本柱の1つとして休養は必要なものとされています。うつ病などのこころの病気も骨折、捻挫、手術後といった身体疾患と同様、「動かさない時期」と「動かす時期」があります。
うつ病では、心身のエネルギーが低下している状態のため、頑張って仕事しよう、何かをしようと思っても逆に疲弊してしまいます。そのため、職場復帰するためにも「動かさない時期」では、休職してエネルギーを溜めることが必要となることを周りの方が理解してあげることが大切です。

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2.「3つの壁」

 職場復帰を迎える時には下記の「3つの壁」があると言われています。復帰する際にどのような感情が生まれやすいのかを知っておくことは、気配りや声がけをする際に大切となります。

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①「長欠感情の壁」

長欠での復帰直後は、「長く休んでしまったことで迷惑をかけたのではないか」、「みんなはどう思っているのだろうか」、「職場に到着したら上司や同僚にどのように挨拶をしたらいいのか」・・・など、周りの人達に自分を受け入れてもらえるのかといった不安を持っています。みなさんも病気などで数日休むことがあるかと思いますが、休んでいる時に「忙しい時に休んで申し訳ないな」「自分がやるはずだった仕事を他の人にやってもらって悪かったな」などと思ったことはないでしょうか。やはり数日でも申し訳ない気持ちや不安になるものです。それが長欠となると、その人の抱える不安や心配の大きさが想像できるのではないかと思います。

②職場滞在の壁

 「周りは忙しそうに仕事をしているけど、自分は時間をもてあましてる・・なんだか役に立っていない・・」と感じ、仕事ができてないように思ってしまうことで、罪悪感が生じる場合もあります。この時期は、病気の再発リスクにも注意が必要と言われています。

③パフォーマンスの壁

 ①長欠感情の壁、②職場滞在の壁を乗り越えた後にやってくるのがパフォーマンスの壁で、まだ本来の自分の能力を発揮できていないと感じてしまい、自分の職場のポジションや将来のキャリアに対して不安を感じてしまうことがあります。

3.周囲のサポート

特別扱いしすぎず、自然に接する

 長欠していたスタッフの方に対して、どのように気遣ってあげればよいのか、また、どんな声がけをしたらよいのか迷う方も多いと思いますが、復帰した本人も周囲の反応を気にしています。
まずは、必要以上に気を使うのではなく、特別扱いしすぎずに自然な態度で迎えることが大切です。
また、状況を聞き出すようなことは慎み、「おはようございます」「お疲れさまでした」といった普段通りの挨拶や「また、一緒に働けてよかった」といった、温かく迎えてあげたいという気持ちを伝えることで、「仲間として受け入れてもらえるんだ」と言った安心感に繋がっていきます。

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焦らせず、ゆっくりと

 復帰後は、「自分は迷惑をかけてしまった」「早く前のように働けるように頑張らないと」と焦ってしまったり、力が入ってしまうことがあります。そのため、「いまで以上に頑張っていこう!」といった、過度の励ましが時には負担になってしまうことがあります。まずは、「自分のペースで大丈夫」「無理せずに、少しずつゆっくり慣らしていこう」といった、メッセージを伝えてあげることも大切です。

相手への声がけ

 長欠の後は仕事も浦島太郎状態で分からないことも多く、体調が辛いこともあるかもしれません。そのような時には、「今、やっている仕事で何か分からない点や困っている点はある?」、「仕事の量は大丈夫?」、「いつもより少し顔色が悪いけど体調は大丈夫?」といったように、相手が話しやすいように具体的に声がけしてあげると良いでしょう。

 また、相手が話をしてくれた際には、相手の言い分を否定したり一方的に説得したりせずに、心配していることを伝えて、相手が安心して話せる環境の中で共感しながら最後まで話を聞いてあげることが大切です。

長欠の後、スタッフが職場復帰していくためには周囲の理解やサポートが必要です。そのためには、休職が必要であったこと、復帰する際にどのような感情が生じやすいかなどを理解することも大切です。   

接し方に迷いが生じることもあるかもしれませんが、「復帰する本人が一番、不安に思っている」ということを頭に置いて、その人の気持ちを理解していこうという気持ちを持ちながら、温かく見守り変化に気づき声がけをするなど、スムーズに復帰が進むようにサポートしていくことが必要です。

参考資料:「職場復帰に関しての支援」 こころの耳 厚生労働省 
     「職場復帰、成功に向けて」 厚生労働省

臨床心理士・公認心理師
高橋 美千代

 

 

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