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コラムVol.14 扶養制度を考える

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コラムVol.14 扶養制度を考える

令和3年も残り2か月足らずとなりました。

毎年この時期になると職場のパートタイム労働者が年間の収入が103万円を超えてしまうと扶養の枠を超えてしまうので、出勤時数の調整をしたいという声を聞くことがあるのではないでしょうか?

パートタイムシフト労働者のほとんどは家庭の都合や家計の補助的収入を目的として、働く時間や日数に制限をかけています。なぜ、年間収入が103万円を超えてはいけないのでしょう?

このことは「103万円の壁」と言われ、何十年もの間パートタイム労働者たちに盲目的に守られてきました。しかし、もともと所得税法では配偶者控除がなくなっても配偶者特別控除制度というものがあって、(平成29年の税制改正で大きく制度は変わりましたが)いきなり控除額がゼロになるわけではなく、年間収入150万円以下までは配偶者控除と同じ38万円が配偶者特別控除として適用されるのです。意外とこの制度は知られていなく、絶対に103万円未満でないといけないと勘違いしている人が多いのです。38万円の控除額を気にするのなら年間150万円まで稼いでも大丈夫ということになります。


ところが、103万円の壁とは別に「130万円の壁」というものがあって、こちらは健康保険・厚生年金保険の扶養から外れてしまうという問題に直面します。向こう1年間に130万円以上働くと見込まれた場合はただちに扶養から外れなくてはなりません。年末になって調整するという事実に基づいてではなく、あくまで年間の収入見込み額として130万円を超えそうになったら扶養から外れる申請をしなければならなくなります。例えば月収で11万円を超える月が2~3か月続いたら年間で130万円超えると見なされます。もし、この制度の扶養から外れた場合には勤め先の健康保険、厚生年金制度に加入しなくてはならなくなりますので、保険料の半分は会社が負担してくれますがもう半分は毎月の給与から天引きされることになります。仮に配偶者特別控除が受けられる年間収入150万円まで働くとしたら月に換算すると12万5千円の給与となり、例えば全国健康保険協会東京支部の保険料率で計算すると、雇用保険や所得税を含め約2万円前後の税金が引かれることになります。そうなると手取りは月額10万5千円となってしまい、年間で126万円の現金が残ることになります。これだと130万円より少なくなってしまいます。年間150万円稼いでも手取りで130万円を切るなら最初から130万円未満に抑えて扶養のままでいれば保険料は払わなくて済みますから、手元に残るお金はこちらの方が多くなるわけです。もちろんそれだけ労働時間も少なくて済みます。さらに細かく言えば、住民税も課税されますし、扶養から外れると扶養に入っていた夫ないし妻の会社の給与制度にある配偶者手当や家族手当がカットされることになります。だいぶ昔の話になりますが最高で月額4万5千円の配偶者手当を支給しているケースがあり、この場合、年間で50万円以上もの手当が支給されていますから絶対に扶養から外れて働くなんて考えられません。ここまでの優遇はさすがにないでしょうが相場で1万円くらいだとすると、家計的に年間12万円の手当がなくなることも配偶者特別控除で受けられるメリットをはるかにしのぐデメリットになるでしょう。


103万円の壁を越えると配偶者手当がカットされ、所得税が課税され100万円の壁と呼ばれる住民税の課税もされるトリプルインパクトが待ち受けていますし、配偶者特別控除があっても社会保険制度にはばまれて130万円の壁はそうやすやすと越えられそうにありません。


もともと、この配偶者控除制度や健康保険・厚生年金制度の扶養とは、夫は外で働いて経済を活性化させる生産労働、妻は専業主婦として家庭を守り、子を育てて人口を増やす再生産労働という思想のもとに扶養者を手厚くするという概念で生まれた制度でした。高度経済成長期には見事に当てはまりバブル期にもそれなりにはまっているように見えていました。近年は人口減少による労働力不足の解消と女性の社会参加を促進するためにこれらの制度を少しずつ改革していますが、大きな効果を発揮しているようにはみえません。

綿密な計算のもとに収入を予測し家計全体の可処分所得を増やす計画を持ち合わせず、迂闊に103万円の壁を越えてしまい、かえって現金収入が減ってしまうのなら、おとなしく103万円の壁か130万円の壁の前で立ち止まるしかありません。必然的に年末が近づくと調整をせざるを得なくなるのです。


共働きの家庭は年々増え続けている反面、税や社会保険の制度が追い付いていないように思われます。働き方の多様性の意識に関する部分はだいぶ浸透してきているように思えますが、こういった制度が多様性に適応していないと、いろいろな場面でひずみが生じ不具合が出てきてしまい、その変化のスピードを緩めてしまったり止めてしまったりすることにもなりかねません。行政は早急にこれらを議論し制度改革をおこなうべきでしょうし、われわれ国民も声を上げていかなければならないのではないでしょうか。

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