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コラムVol.17 障害者雇用を考える

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コラムVol.17 障害者雇用を考える

「障害者の雇用の促進等に関する法律」の第43条1項において、民間企業の事業主は従業員数が一定以上の場合、法律で定められる割合の障害者を雇用しなければならないとされています。この割合を一般的に法定雇用率と呼んでいて、令和3年3月1日より2.3%に引き上げられました。逆算すると常時雇用する労働者が43.5人以上いる会社は1人以上の障害者を雇う義務が発生します。法定雇用率が未達成の会社のうち、100人以上の従業員がいる会社は障害者雇用納付金制度により納付金が徴収され、この納付金を使って法定雇用率を達成している企業に報奨金が支払われる制度となっています。

厚生労働省が平成30年に実施した「平成30年度障害者雇用実態調査」によると、5人以上従業員がいる会社に雇われている障害者の数は82万人余りだそうです。そのうちの4分の1が正社員として、残りの4分の3が短時間労働者として雇用されています。具体的な雇用状況は実態調査に委ねますが、障害者を雇用する際の課題として「会社内に適当な仕事があるか」を多くの会社が挙げています。また、雇用後の配慮として通院や服薬などの管理、精神障害者における労働時間の配慮の難しさも挙げられています。このようなことから行政機関に対して障害者雇用支援設備や機器の配置のための助成・援助や、具体的な労働条件、職務内容、環境整備などが相談できる窓口の設置を期待する声が多くなっています。

法律で定められていることで、また法定雇用率が上がったことで障害者雇用に取り組む規模の会社の数はさらに増えたと思います。従業員が100人以上いる会社では障害者の法定雇用率が下回っていると1人につき年間60万円の納付金が発生します。これが2人、3人・・・となると年間数百万円を納めることになってしまいます。雇用義務を履行しない会社にはハローワークから指導が入ることがありますし、障害者の雇い入れに関する計画書の作成を命じられたり、それに従わない場合には会社名が公表されたりすることもあります。会社の規模が大きくなるにつれ避けては通れない課題となるのですが、いきなり障害者を雇い入れようと思っても何から始めていいのか分からないことだらけだと思います。障害の種類も身体、知的、精神、発達と種類が分かれており、軽度、重度と程度が分けられているものもあります。それぞれにできる仕事、できない仕事もあるでしょう。先に述べた実態調査にもあるように、どういう職種につけるのか、それが労働者にとって適切な仕事内容なのか、健常労働者とは別の何を配慮して管理しなければならないのかなど、やはり行政機関などでのサポートがないとなかなか実行できるものではありません。最近では障害者雇用に関して人材の紹介からサポートまでを行う民間業者も増えてきましたが、これもまたどこに頼んだらいいのかも判断に迷うところです。

約3年前、中央官庁の8割にあたる行政機関で3千人以上の障害者雇用が水増しされていたことが発覚し世間を騒がせました。その後再発防止の対策が取られ現在は適正に運用されていますが、旗振り役である行政機関がこのような実態だったことは多くの当事者たちを落胆させ、民間企業の雇用推進に大きく水を差しました。

海外での法定雇用率はフランスで6%、ドイツは5%と世界的にノーマライゼーションが浸透していく中で、日本は実態も意識も大きく遅れていると思います。ただの数字合わせではなく、社会全体が障害者を区別することなく受け入れるためにも法律や制度を見直し、働く場においても多様化の流れに上手く乗って人材を活用していくアイデアを、私たちひとりひとりが出し合っていくことが何事においても共通して言える大事なことなのではないでしょうか。 

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