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コラムVol.18 労使協定

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コラムVol.18 労使協定

 ついこの前、年が明けたと思ったらもう3月です。1月も新しい年の始まりでしたが4月も新年度の始まりです。労務関係に絞っても新年度に向けていろいろと準備をしなければならない時期になっています。

 そんな中でもっともポピュラーなのが36協定の締結ではないでしょうか。労働組合がある会社は労働組合が、組合のない会社は従業員の過半数を代表する者が事業主と書面による協定を結び、それを管轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。なぜ、このようなことを行う必要があるのか疑問に思ったことはないでしょうか。

 実は、労働基準法第三十二条において、1日の実働8時間、1週間の実働40時間を超えて従業員に労働をさせてはならないことになっています。たとえ1時間でも残業や休日労働をさせるとたちまち違反となり、30万円以下の罰金に処せられてしまいます。「そんなこと言われても納期が迫ってて、残業や休日労働をしないとお客さんに迷惑をかけて仕事が回らなくなっちゃうよ!会社潰れちゃうよ!!」なりますよね。そこで例外措置として先ほどの条件を満たしたうえで会社と従業員が双方合意をすれば、一定の範囲で残業や休日労働をしてもいいという条文が労働基準法第三十六条に定められています。ここから数字の読み方そのままに“サブロク協定”と呼ばれているのですが、いくら労使間で合意がなされているとはいえ、無限に残業や休日労働をさせていいということでもありません。労働基準法第三十六条五項④において1カ月で45時間以内、1年間で360時間以内と上限が定められています。休日に関しては就業規則で定められた法定休日(毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日)に労働させることに上限はありませんが労働者の健康に最大限配慮した日数でなければなりません。「いや、でも滅茶苦茶忙しいときは毎日終電まで仕事しないと終わらないときだってあるじゃない。そうやって臨機応変に対応しないと仕事もらえなくなっちゃうよ。そしたら会社潰れちゃうよ!!」というような場合、あくまで業務上やむを得ない理由でのみですが、月の残業や年間の残業がもっと多くなってしまうという会社においては2019年4月より特別条項という項目を決めて1ヶ月に100時間まで、2ヶ月もしくは6ヶ月でそれぞれの平均で80時間以内(つまり連続した2ヶ月で160時間を超えない、もしくは6ヶ月で480時間を超えない)を守ったうえで、年間合計で720時間まで残業をさせることができます。ただし、超過労働問題が著しく働き方改革が推し進められている最近では、この特別条項が認められる業務の繁忙理由は単純な忙しさ(例えば季節的な繁忙や納期のひっ迫のような理由)だけでは認められなくなってきていますので、締結、届出する際は注意が必要です。
※上記の内容は一般的に日曜日が法定休日となっている業種の会社の例なので、変形労働時間制を採用している会社は残業上限の基準が多少変わります。

労使協定は時間外・休日労働に関することだけでなく、裁量労働制や、みなし労働、法定控除以外の費用を給料から差し引く場合、一斉休暇の適用除外なども労使間で締結が必要です。労働基準監督署に届出なくてもいいものもありますが、書面による締結を行い従業員に周知をしていなければその効力は発生しません。

丁稚奉公や女工哀史など、戦前の日本の労働史が必ずしも労働者が奴隷的扱いを受けていたとは言い切れませんが、戦後になって、国民の三大義務のうちの一つである「勤労」において、労働者と使用者を対等とはっきりと位置付けた重要な法律の一つが労働基準法です今でこそ当たり前のように思われがちなことでも、一昔前にはあり得ないような悪条件で働いていた人たちがいて、不幸にも身体を壊したり亡くなった方たちがいたりしたからこそ、それを繰り返さないために法律や制度に改正を重ね現在に至っています。そのことを忘れずに、ときどきでも労働基準法や労働安全衛生法などを見つめなおし、未来に向かって経済ならびに社会を成熟させていくことも私たちの義務の一つであると思います。

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