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コラムVol.19 教育研修と自己啓発

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コラムVol.19 教育研修と自己啓発

 4月に入り、新しい季節とともに職場にも新しい仲間たちが増えると思います。新卒の新入社員はもちろんのこと、中途採用で入った人たちも新しい職場、新しい環境においては新人であることに変わりはありません。まずは会社のことを知ってもらうためにオリエンテーリングや新人研修を毎年この時期に行う会社は少なくないのではないでしょうか?

 学生であった人たちが社会に出て初めて働くということは、それまでの20年前後の人生経験の中で大きなインパクトがある出来事だと思います。今までは学校に通いさえすれば先生たちが授業で勉強を教えてくれました。教えることが仕事なのが先生ですし、学生は授業料を払っているので教えてもらえることは当たり前なのですが、義務教育はほとんどが税金で補填、専門学校や大学にしても授業料を払うのはほとんどの場合親たちでしょうから、学生たちはあまり実感してこなかったのが現実です。晴れて社会人になり、会社で働き始めると何が一番変わるのかといえば、会社には教えることを仕事にしている人がいないということ、今度は授業料を払わずにむしろ逆にお給料をもらいながら、仕事を覚えなければならないということです。このことは言葉で説明すると大抵の人たちは理解しますが、突き詰めていくと実はとても大きな違いがあることに気付いている人は少ないと思います。これらの違いをまず初めに徹底的に教え込まないと、その人のその後の社会人人生を大きく狂わせかねないことになります。

また、既存の社員たちに関しても、企業を成長させるために欠かせない人材育成は職場内で勤務時間中に教えられることには限りがあるので、外部の研修制度などを利用して行う必要があります。もちろん、全員を対象にするわけにはいきませんが、例えば管理職研修や専門職の知識をつける研修はある程度の一定数に対して行わなければ会社の将来が危ぶまれます。

昇任・昇格試験や自身のスキルのステップアップのために自主的に勉強を行う人ももちろん少なからずいるでしょうが、そもそも承認制度や評価制度が確立していない会社では、それらは徒労に終わるどころか、自己啓発の機会を会社が奪っているとすら言えるでしょう。

 さて、この大事な研修・教育制度なのですが、会社がかける予算について、労務分野の情報機関である「産労総合研究所」が「2021年度 教育費用の実態調査」を発表しています。それによると2020年に企業が行った従業員一人当たりの教育費用は24,841円で前年よりも10,787円減少しています。これは新型コロナの影響が大きいと思われ、今後は回復していくものと思われます。ケガの功名ではありませんが、研修というとどこか都会の大きな会議室へ詰め込まれ、周りを気にしながらみっちり勉強をしないといけないイメージがありましたが、WEB化によりオンラインやストリーミング再生による研修が主流となってきました。日本全国、いや世界中のどこにいても同じ内容を視たり聞いたりすることができる訳ですから、オンラインミーティングを否定する企業はもはやゼロに近いといっても過言ではないので、学ぶ側にとってこんな良い機会が巡ってくる時代になるとは予想もつかなかったことでしょう。

 初めに述べたように、社会に出るということは授業料を払って仕事を教えてもらうのではなく、初めのうちは給料をもらいつつ仕事を教わりながら覚えていかなくてはならないということです。時代が変わり大きな声では言えませんが、勤務時間外において予習・復習をしなければ誰よりも早く仕事を覚え、会社に貢献できるようにはならないでしょう。既存の社員に関しては働き方改革で超過労働の削減、ワークライフバランスの見直しなどもちろん大切なことですが、実労働時間が減ったからと言って単純にその人の生活や環境が豊かになるものではないと思います。空いた時間をただ余暇として有意義に使うことは、もちろん人生において大切なことですが、知識の習得やステップアップのための自己啓発に使ってはいけないということではないでしょう。企業は今一度人材育成に時間とコストをかけることの意義を見直し、働く我々は生涯学習の大切さを見つめ直すことが大事なのではないでしょうか。

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