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コラムVol.34 相手との距離を縮める自己開示

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コラムVol.34 相手との距離を縮める自己開示

はじめに

「後輩と会話は続くようになったけど、まだあまり打ち解けられていないような気がする」「なかなか本音や悩みを聞き出せない」と感じることはありませんか。

前回は、会話を上手く続けるスキルとして「開かれた質問」と「閉じた質問」についてご紹介しましたが、今回はより人との距離を縮めたり信頼関係を深めたりしていくためのスキルの1つである「自己開示」について、ご紹介したいと思います。



目次

1.自己開示とは

自己開示とは、自分の情報(意見、価値観、内面など)をありのままに相手に伝えることです。

みなさんは、今まであまり親しくなかった相手に、自分の趣味の話をしたところ相手との共通点があり、そこから話が弾み何だか以前より距離が縮まったような感覚や、ちょっとした仕事の相談や困りごとなどの自己開示をされたことで「自分に心を開いてくれているのかな」と感じた経験はないでしょうか。このように、自己開示は同じ職場で働くスタッフ、取引先の担当者、知り合いなどと、関係性を築いていく時に役立つスキルとされています。

2.自己開示の返報性

みなさん「返報性の原理」というのを聞いたことがありますか。これは、相手が自分に何かをしてくれたりした際に「自分も何かお返しをしたい、しなければならない」と思う心理現象のことです。例えば、「Aさんに仕事を手伝ってもらったので、私もAさんの仕事を手伝ってあげよう」「同僚に旅行のお土産をもらったから、私も同僚にお土産を買っていこう」といった心理現象のことです。

実は、自己開示にも「自己開示の返報性」があると言われていて、自己開示された人(相手)は、その内容に応じて同じ程度の内容の自己開示を返しやすくなると言われています。みなさんも「あ!そ~いえば・・」と思い当たることはないでしょうか。

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3.自己開示のレベル

自己開示が人との距離を縮めたり信頼関係を深めるからといって、初対面の人にいきなり「会社の人間関係で悩んでいて・・」「私って人の話を素直に聞けないところがダメなんです」などと言った内容を話すと、相手も驚いてしまい逆効果になってしまいます。そのため、相手との関係性を考えながら自己開示をすることが大切です。

自己開示は同じ内容であっても、人によってレベルの感じ方が違うこともありますが、一般的に考えられている自己開示のレベルを見てみましょう。
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初対面の人や、これから信頼関係を築いていきたい人には、「趣味」「事実」など自己開示の少ないレベルからスタートし、徐々に自己開示のレベルを深めていく方法がよいでしょう。

また、目白大学名誉教授の渋谷氏によると、部下に対して上手に自分の体験談を話すリーダーは、そこにさりげなく失敗談の自己開示を織り込んでいるそうです。自己開示をされた部下は、「リーダーも最初は失敗したんだな」と、そこから親近感を覚え、徐々に距離が縮まっていくようです。

 

4.自己開示・開かれた質問・閉じた質問で会話上手に

下記のように「自己開示」と前回のコラムで取り上げた「開かれた質問」「閉じた質問」を上手く使うと会話も続き、相手からも自然と自己開示をしてもらうことができます。

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みなさんは今までどのくらい自己開示をしていたでしょうか。人は、相手の気持ちを聞いたりすると親しみを感じたりします。そのため、関係性に合わせて自己開示をすることで、相手との距離が縮まったり、信頼関係やより良い関係を築くことに繋がります。

「もっと同僚と仲良くなりたい」「もっと部下から本音を引き出したい」、そんな時には関係性に合わせた自己開示+開かれた質問、閉じた質問を上手く使って、少しずつコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。


<参考>
渋谷昌三著『「この人についていこう!」と思われるリーダーになる心理法則』(PHP研究所)

臨床心理士・公認心理師
高橋美千代

 

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