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コラムVol.27 ストレスチェックの課題【後半】

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コラムVol.27 ストレスチェックの課題【後半】

はじめに
 前回のコラムではストレスチェックの意識調査の結果から、①ストレスチェックの必要性が理解されていない、②高ストレス者が医師に申し出る割合が低い、③集団分析結果の活用が上手くできない、といった課題があることをお話しました。

今回はこれらの課題を踏まえ、ストレスチェックを効果的に活用する方法についてご紹介したいと思います。


目次

PDCAサイクル

ストレスチェックを効果的に活用するためには、PDCAサイクルが重要だとされています。では、PDCAサイクルとはどのようなものなのでしょうか。

これは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)を右図のように繰り返すことで業務や取組みについて継続的に改善していく方法のことです。

コラム用画像_202211_1.png

ストレスチェックにおけるPDCAサイクル

ストレスチェックの実施についてPDCAサイクルに当てはめると、ストレスチェックの実行計画(Plan)→ストレスチェックの実施、環境改善の実行(Do)→実行した内容に関する評価(Check)→課題についての改善(Act)というサイクルを継続的に実施するということになります。

具体的に、各ステップのポイントなどを下記の図にまとめてみました。

コラム用画像_202211_5.png

PDCAサイクルにおける各ステップのポイント

<ステップ①Plan(計画・実施前の準備)>

実施の目的、方針・実施体制を決定し、集団分析の実施や結果の活用方針についても検討します。集団分析は努力義務ですが、実施することで職場のストレス要因が可視化され環境改善に取り組むことが可能となることから、労働者のメンタルヘルスの向上に繫がります。

労働者に対してストレスチェックの目的を改めて説明するとともに、集団分析を実施する場合は分析の目的や結果の活用方法について説明することで、ストレスチェックの必要性がさらに理解されやすくなります。

また、厚生労働省が所管する(独)労働者健康安全機構が運営する公的な機関、産業保健総合支援センターでは、事業所の産業保健スタッフ等を対象に産業保健に関する研修や相談等を無料で行っていますので、実施前の準備として利用してみるのも良いかもしれません。

<ステップ2:Do(実施)>

 ストレスチェックの実施では、仕事が忙しい時期や人事異動の時期を避けるなど、なるべく受検率が高くなるように工夫することが大切です。(集団分析をする際にも偏った集団を分析しないように受検率は重要)

 実施後のフォローとして、高ストレス者の面接指導の申出の勧奨はもちろんですが、高ストレス者の面接指導の申出の割合が低ことを考えると、自分が高ストレスであることを会社に知られてしまうという懸念を持っていることが推測されます。そのため、高ストレス者と限定せずに健康相談の窓口を設けるなどして敷居を低くすることも方法の1つです。また、小規模事業場の場合は、なかなか高ストレス者に対する医師による面接指導が難しい場合もあります。そのような時には、産業保健サービス(高ストレス者に対する医師による面接指導等)の地域窓口である地域産業保健センターが無料で行っていますので、利用を考えてみてもよいでしょう。

集団分析では、「より適切な職場環境改善を行うため、部署や職種、職位・職階等、業務実態にあった分析単位で集団分析を実施します。また、部署別の比較等のほかに、過去の結果と比較し、職場のストレス状況の変化を確認することも大切」とされています。この集団分析から環境改善を実施していくことで、労働者のストレス要因の低減→メンタルヘルスの向上につながり、この結果を労働者へ報告することで、「次のストレスチェックもきちんと取り組もう」「会社はきちんと自分たちのメンタルヘルスを考えてくれている」という意識に繫がっていくことが考えられます。

コラム用画像_202211_3.png<集団分析の活用例>


<ステップ3,4:Check(チェック)&Act(改善)>

 上手くいった点を振り返り、課題を整理して改善していきます。厚生労働省では下記を振り返りのポイントとして挙げています。

コラム用画像_202211_4.png

 ストレスチェックを効果的に活用することで、企業側と労働者側の双方にメリットが生まれてきます。ストレスチェックを実施する際には、PDCAサイクルを活用し、集団分析の結果に基づき職場の状況分析をすることで環境改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省 「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」

臨床心理士・公認心理師
高橋美千代

 

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