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コラムVol.25 キャプラン氏の「予防の三段階~職場におけるメンタルヘルスの予防的アプローチ~」

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コラムVol.25 キャプラン氏の「予防の三段階~職場におけるメンタルヘルスの予防的アプローチ~」

はじめに

 ストレス社会といわれる中で健康に働くためには「予防」という視点も重要です。皆さんも身体的な健康を考える上で、日々の運動や健康診断など予防として実施していることがあるのではないでしょうか。では、メンタルヘルスの部分ではどうでしょうか?身体的な健康と同様に、メンタルヘルスを考える上でも予防的なアプローチは必要です。今日は、職場で働く社員やスタッフのメンタルヘルスに活用できる「キャプランの予防モデル」についてご紹介します。

目次

1.キャプランの予防モデル

 キャプラン(Caplan,G)は、1960年代に予防の概念として予防の三段階を提唱しました。予防の三段階は一次予防・二次予防・三次予防に分けられます。それぞれの段階で目的があり、各段階で何を予防するのかという視点で考えると理解しやすくなります。
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図1:キャプランの「予防の三段階」

2.それぞれの段階で何をするのか

職場のメンタルヘルスにおいてキャプランの「予防の三段階」を活用する場合、それぞれの段階で何をすればよいのか考えてみましょう。

◆一次予防
 一次予防の目的は発生予防と発生率の減少で、問題の発生を予防するための対処となります。職場でのストレスをゼロにすることは難しいですが、ストレスを低減できるように職場環境(作業スペース、温度、湿度、騒音、照明など)を整える、職場でのストレス要因に気づく、管理職や働く社員・スタッフへのメンタルヘルスに関する教育が対処として考えられます。

◆二次予防
 二次予防の目的は早期発見、早期対応で、リスクを抱えた人たちの問題が深刻にならないための対処となります。そのため、精神疾患を発症させないために、上司や自分自身が早期段階でメンタルの不調に気づき対応することが大切です。一次予防でのメンタルヘルスに関する教育は、二次予防の目的にも繫がります。この段階では、ストレスチェックの実施によりリスクのある人を早期発見する、そして早期に対応できる相談窓口の体制作りが対処として考えられます。

◆三次予防
 三次予防の目的は再発予防・社会復帰で、特に社会復帰における再発防止を目指す対処が大切です。職場に復帰する際には誰でも「本当に大丈夫だろうか」と不安になったり、受け入れる側も接し方に悩んだりする場面があるかもしれません。せっかく職場に復帰しても再発してしまうケースが多いと言われています。休職した社員やスタッフの受入れ体制はもちろん、休職した社員が職場へ受け入れられやすいように振舞う意識を持てるようにサポートする体制を整えておくことが重要な対処となります。

3.職場で出来る予防の三段階を考える

2で説明した予防の三段階の内容を図にすると下記のようになります。
コラム用画像_202209_3.jpg
図:1 職場のメンタルヘルスにおける予防の三段階の例

 職場のメンタルヘルスを考える上で大切になるのは、一次予防の段階です。ストレス要因がどこにあるのか、その要因にどのように対処していくのかがメンタルの不調を予防することに繫がります。

上記で述べた対処は一例であり、それぞれの職場によって取り組める内容も違ってくると思います。予防段階の目的に合わせ、それぞれの職場で出来るメンタルヘルスの予防的アプローチをぜひ考えてみてはいかがでしょうか。

臨床心理士・公認心理師
高橋美千代

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