コラムVol.23 ストレス反応のプロセスとストレスコーピング【前半】
職場環境は時代とともに変化し、雇用形態の多様化が進んでいます。多様化が進む中で、職場でのストレスから心身に不調をきたして、休職する人も増加の傾向にあると言われています。
また、厚生労働省の「労働安全衛生調査(令和2年)」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は54.2%」となっています。半数以上の人がストレスを感じながら仕事をしていることが分かります。
しかし、同じ状況の人すべてが心身に不調を引き起こすわけではありません。心身に不調が現れる人と現れない人がいるのは、なぜなのでしょうか?今回は前半と後半に分けて、ストレス反応のプロセスとストレスコーピングについてお話をしたいと思います。
目次
ストレッサー、ストレス、ストレス反応
みなさんがよく耳にする「ストレス」とは、外からの刺激(環境の変化、病気、プレッシャーなど)を感じて生じる緊張状態のことで、ストレスを引き起こす外からの刺激のことを「ストレッサー」と言います。
そして、このストレッサーを受けた時に生じる身体面や心理面などの反応を「ストレス反応」と言います。
ボールをストレスに例えると、ボールを指で押さえる力をストレッサーと言い、ストレッサーによってボールが歪んだ状態をストレス反応と言います。このストレス反応は、心理面・身体面・行動面に分けることができ、強いストレス状態になると、さまざまな心身の不調が引き起こされます。
ストレス反応のプロセスとストレスコーピング
ストレスコーピングとは、ストレッサーに対して行う、何らかしらの対処行動のことを言います。ここで、ストレス反応のプロセスがどうなっているのか見てみましょう。
図1 ストレス反応のプロセス
ストレス反応のプロセスですが、きっかけになる出来事などストレッサーとなるものがあり、それらの出来事に対して、「これは自分にとって脅威になるか?」「これは自分でコントロールできるか?」など、認知や評価がされます。そして、コーピングが行われ、自分にとって有害や脅威だと評価されると、心理面、身体面、行動面におけるストレス反応が生じます。つまり、ストレッサーがストレス反応に直結しているわけではないということになります。コーピングが上手くいき、適切にストレッサーなどが処理されることにより、自分にとって有害や脅威にならないと判断されれば、ストレス反応は生じないということになります。また、一過性の心身の不調が生じたとしても、程度は低いと考えられています。そのため、ストレッサーに対するコーピングが大切となってきます。
今回のポイントは、ストレッサーがストレス反応に直結しているわけではないという点になります。次回のコラムでは、今回の話を踏まえ、みなさんが少しでもストレッサーに対して、上手く対処できるヒントを得られるように、ストレスコーピングについて詳しく説明したいと思います。
参考資料
厚生労働省 令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
久住眞理菅著 筒井未春 他著「ストレスと健康」
臨床心理士・公認心理師
高橋美千代