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コラムVol.22 小さな変化がサインとなるメンタルヘルスへの気付き

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コラムVol.22 小さな変化がサインとなるメンタルヘルスへの気付き

三日・三月・三年という言葉をご存じでしょうか?「三日我慢できれば、三か月耐えられる。三か月耐えられれば三年頑張れる」という意味で、元は芸事や修行の心構えを表した言葉だそうです。

三日・・・新しい環境で慣れないことも多く「自分は本当にここで働けるのだろうか」と不安な気持ちになってしまう時期、そして、三月・・・仕事や人間関係などになかなか適応できず悩んだり、新しい環境で働くことによるストレスが溜まってくる時期と言えます。

4月から働き始めた方々や異動して新しい部署で働き始めた方々は、今が次の三年に続く大切な時期とも言えます。三月にあたるこの時期を次の三年に繋げていくために、メンタルヘルスの面からお話をしたいと思います。



五月病、六月病

三日・三月・三年の「三月」に当たる頃は、4月からの環境の変化による疲労やストレスの蓄積、新しい環境に適応できないなどから、「やる気がでない」「眠れない」「だるい」「なんとなく憂鬱な気分」などの症状が出てしまう時期と言えます。

ゴールデンウィーク後にこのような症状が出ることから、五月病と言われていますが、今は6月ごろに症状が出ることもあるため、六月病とも言われているようです。(※五月病、六月病は病名ではなく、現れる症状の総称となります。)

ストレスと自律神経

では、なぜ五月病や六月病のような症状が出てしまうのでしょうか?その1つに自律神経の働きが関係しています。

自律神経は交感神経(活動の神経)と副交感神経(休息の神経)の2つの働きがあり、お互いにバランスを取って作用しています。また、自律神経は本当に起こっている現実の危機と、頭で考えてしまう想像の危機を判別できないとも言われています。そのため、4月からの環境の変化によるストレスはもちろん、「いつまでたっても他の人より仕事が上手くいかない」などの不安や危機感を長期間抱えることや、環境に適応できないといったことが原因となることで、交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、五月病や六月病に繋がることがあります。

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図1 交感神経の働き

図1は主な自律神経の働きです。この自律神経のバランスが崩れてしまうと、「だるい」「やる気がでない」「不眠」などの症状から、「仕事に集中できない」「ミスが多くなる」など、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼすことに繋がってしまいます。

三月を三年に繋げるために

三月目は、新しい環境でひとり立ちをして仕事をするなど、企業にとってもスタッフにとっても大切な時期と言えます。

心身相関といって、心の問題は身体に影響を及ぼし、身体の問題は心に影響を及ぼします。この時期「あれ?何だか集中力がないな」「やる気がなさそうだな」「以前よりミスが多いな」と気になる同僚や部下の方がいるときには、上司や先輩など周りの方々から「大丈夫?少し疲れている?」「睡眠はとれている?」などと声をかけて、話しやすい環境を作ることが大切です。

三月を三年に繋げていくためには、周りの方や自分自身の「何だかいつもと違う様子」に気が付くことが大切です。また、セルフケアとして、仕事以外の趣味を持つ・友人とのおしゃべり・自分にとってのリラクゼーション法など、ストレス対処法について日頃から考えておくことも必要です。

ストレスによって身体の中で起こっている変化は目に見えません。そのため「気合で何とかなる!」など、簡単に考えてしまうことがあるかもしれませんが、気合いでどうにかなることばかりではありません。同僚・部下・自分自身を大切にするために、ぜひメンタルヘルスの大切さを考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料
「産業カウンセリング」 一般社団法人 日本産業カウンセラー協会


臨床心理士・公認心理師
高橋美千代

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