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コラムvol.2 多様な働き方

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コラムvol.2 多様な働き方

 働き方改革が叫ばれるようになってだいぶ時間が経ちました。これは元々、ワークライフバランスの拡充や長時間労働問題の解消、正規・非正規雇用の賃金格差の是正などが主な目的でした。様々な法改正を施行し、関係各署が盛んにその概念を導入するのに躍起になっていましたが、年々加速する人手不足により募集賃金は上昇し、また、世界的なパンデミック対策のために導入したテレワークや時差出勤により労働時間や通勤時間は減少し、副産物的にメンタルヘルス不調者も減少するなど、今やその目的は達成されつつあります。

 気がつけば「働き方改革」という言葉そのもの自体が働き方の多様性などと抽象的な言葉に変化し、良くも悪くも曖昧な概念のまま定着しつつあるかのように見えます。

 そんな働き方改革関連法案の中でひっそりと今年2020年の夏に改正されたのが、雇用保険法と労災保険法です。

 詳細は割愛しますが、雇用保険法に関しては、いわゆる失業手当の受給資格が緩和され、複数の職場で働いた労働時間を合算して規定の時間を超えていれば、今まで認められなかった被保険者期間として認められるようになりました。

 労災保険法に関しては、仕事中の怪我や業務に起因する病気に対して支払われる休業補償給付額などの算定式に、複数の勤務先の給与額を合算出来るようになりました。加えて労災認定の判断の際に、精神的疾病の原因特定にどの仕事でどの位の負荷がかかったのか合算して勘案することも出来るようになりました。

 どちらの法改正もダブルワークなどで複数の企業に雇われ、複数の収入源を持つ人たち(もちろんパート、アルバイトも含まれます。)に、より厚い保護をするものです。

 多くの企業では副業や掛け持ちを就業規則で禁止していると思います。主たる雇用元がどちらか曖昧になり、労務管理も難しく、例えば自社の所定労働時間は法定時間内でも他社での労働時間を合算したときに残業代の支払いを余儀なくされるケースが生じたりする恐れがあることなども理由のひとつでしょう。ひとたびそのルールを変えてしまうと、今後は労働時間管理や雇用保険の手続きに際して他社での労働時間や支払われている給料を聞き取る手間が増えるでしょう。また、メンタルヘルスの不調の原因が特定できず他社での業務の負荷と自社での業務の負荷とを合算され、従業員の健康管理の責任の一端を担わなければならなくなるかも知れません。仮に会社に黙って副業していたとして、それがどこまで免責になるかは今後の判例を待たないとはっきりしません。

 新たな職を探している人、労働時間が極端に減った人はもちろん、今や副業ビジネスという言葉があるほど、複数の職場で働く掛け持ち以外にもSNSなどを使って私物の販売をおこなったり、デジタルデータ化された成果物の販売やインターネット上のみでのサービスを個人が提供したりして、IT技術の進化により今までは考えられなかったような様々な働き方や手法で収入を得られる時代になっています。副業を禁止している就業規則が時代にそぐわないルールだと従業員たちから不満の声が上がるのも想像に難くありません。

 法改正に限らず、また、望むと望まないとにかかわらず世の中は目まぐるしく変化していきます。会社としてその変化にどう柔軟に対応していくか、しっかりと対策を練っておかないと、問題が起きるたびに対処療法に振り回されたり、制度の整っていない会社だと判断されたりして優秀な人材確保も難しくなっていき、次第に業務が圧迫されてしまうでしょう。

 持続可能な発展・成長と自由にライフスタイルを選択しながら働くことが両立すればそれは素晴らしい社会と言えますが、まだまだ私たちがやらねばならないことは沢山あるようです。

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