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コラムvol.1 裁量労働制を考える

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コラムvol.1 裁量労働制を考える

 2018年前後に、労働基準監督署が裁量労働制の労使協定届を提出している企業に対して大々的に調査を行ったのを覚えていらっしゃる方も多いと思います。
 事前のアンケートでデータ収集を行ったすぐ後でしたから、本来の制度の意義と運用されている実態に余程の乖離があったのだと思われます。

 付加価値を創造する企業にとって、常に新しいモノや革新的な成果物を作り上げる為にはどうしてもそれを作り出すための時間(=現場で働く人たちの労働時間)は大きくなりがちで、画一化された単純作業を繰り返す事で産み出す事は出来ません。
 必然的にそれぞれ役割を与えられた人たちに自由な裁量を持たせ、時間を問わず納期に合わせた労働をしてもらう事になります。
 また、その人たちが、どこからどこまでが必要な労働であって、そうでないものがどこからか、という明確な線引きをする事も困難です。
 そういった働き方に対して労働者と協定を結び、一日の労働をみなし時間で捉えることの出来る裁量労働制はとても便利な制度でしょう。
 職種に限りはありますが多くの企業で採用されていますし、この制度がなければ業務が成り立たないであろうと思える職業もあります。

 しかし、この制度はみなし時間さえ決めておけば何時間働いても良いというものではありません。近年の過労死問題、ライフワークバランスやコンプライアンス遵守の観点から、裁量労働制を取り入れている事が長時間労働を慢性化させている諸悪の根源と考えている人も少なくありません。
 自分が裁量労働制のもとで働いていることを知らない、もしくは、いくら残業しても残業代は出ない制度くらいにしか理解していないケースも珍しくありません。(余談ですが、深夜手当は発生するということを見落としている企業はたくさんあります。)
 そういった状態を放置し、働きすぎて命を奪われる、なんて事があっては絶対にならないですし、無理な働き方をしたせいで心身ともに不調をきたすような事になっては、回復するまでに相当な時間を必要とし、大きな人的損失になります。

 裁量労働制はあくまで使用者と労働者が合意のもと締結する協定です。
 その協定書は監督官庁に提出する義務がありますし、労働安全衛生の法改正により実労働時間をキチンと把握する義務も生じます。
 現場で働く人たちは、自分の「裁量」で進捗に合わせた自由な働き方が利点となるため協定に同意しています。
 大切なのは労使間でお互いのメリットを共有した上で協定を結ぶことです。
 昨今、働き方改革や新しい生活で環境も大きく変わってきました。裁量労働制を採用している企業は、これを機会に再度この制度の意義を確認し、労使間で話し合い、付加価値を産み出すためのより良い環境を整備することを目的とした在り方を考える必要があるでしょう。

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