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コラムvol.13 健康診断

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コラムvol.13 健康診断

令和3年も残り3ヶ月となりました。今年もあっという間に過ぎていく感じがしますし、年々感覚的にスピードが上がっているような気がします。筆者の年齢のせいなのか時代の変化のスピードが早くなっているせいなのかどちらかなのでしょう。

一般的な一年という概念は1月から12月までのことを指します。一方、学校や行政、保険などで使われる年度は4月から翌年3月となっています。こちらの「一年」は毎年恒例の行事や業務に取りかかる際にやはり一年の早さを痛感します。
今回の労務コラムは保険年度の中での定番業務のひとつ、「また今年もこの時期か…」と思いがちな定期健康診断の事について触れたいと思います。

定期健康診断と一口に言っても、雇い入れ時の健康診断、生活習慣病予防健診といわれる一般健康診断、特定業務従事者の健康診断、海外派遣の際の健康診断、給食従業員の検便など、労働安全衛生法で定める健康診断にはいくつか種類があります。
一般健康診断は会社勤めをしていればほとんどの人が1年以内ごとに1回受けるポピュラーなものですが、労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる特定業務に従事する労働者に対して事業主は6ヶ月以内ごとに1回、つまり1年に2回定期健康診断を実施しなければならないよう定められています。
ここで掲げられる特定業務とは、
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
と以上のような業務になっています。

どの業務も厳しい環境下で働いたり、取り扱いに注意が必要な劇物を扱ったりする業務なので半年に一度の健康診断が必要だというのは容易に想像できるのですが、注目すべきは特定業務の中に「ヌ 深夜業を含む業務」として、1週に1回以上、または1か月に4回以上、22:00~翌5:00の間の深夜帯に従事する労働者が含まれていることです。
例えばタクシーや長距離トラックの運転手、コンビニエンスストアやファミリーレストランの深夜帯で働く人、テレビ局などの番組制作関係者や映像編集オペレーターなど、いわゆる工業系ではない業種にも特定業務に当たる働き方をしている人が少なくないのではないでしょうか?

健康診断は労働安全衛生法第66条1項で事業主の義務として定められており、違反すると労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金に処せられます。今一度、自社の労働条件、勤務状況などを見直し、不必要な状況で特定業務に該当する働き方をさせていないかを確認する必要があるでしょう。
また、労働安全衛生法第66条5項で健康診断の受診は労働者の義務と定められているので、労働者が健康診断の受診を拒否した場合は、就業規則等の定めによって懲戒処分することも可能です。

健康診断を義務付けることは、作業を行うことによって引き起こされる事故や疾病を防ぎ、またはそれらの早期発見により被害を拡大することを防止するためです。安全や健康に配慮した適正配置になっているかの再確認、作業に起因した健康障害の早期発見、職場の労働衛生環境に問題がないかなどを見つけ出す大事な目的があります。結果に一喜一憂するだけで個々人に直接の利益はないとしても、その情報は職場の作業環境管理や改善のための重要なものとなります。作業効率を上げたり働きやすさを実現したりする直接的要因にはならないかもしれませんが、決して軽視していいものでもないでしょう。

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