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コラムvol.12 最低賃金の改定

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コラムvol.12 最低賃金の改定

令和3年10月1日(一部の県は10月2日、6日、7日、8日)より全国の最低賃金が変更されます。
これは、令和3年7月16日に厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会が答申した「令和3年度地域別最低賃金改定の目安について」などを参考にして各地方最低賃金審査会で調査・審議した結果を取りまとめ、都道府県労働局で関係労使からの異議申出に関する手続きを経た上で、都道府県労働局の決定により発効されるものですがほぼ決まりとみて良いでしょう。

東京都においては時給ベースで1,041円となっており、前年度より28円上がりました。周辺3県では神奈川県が1,040円、埼玉県が956円、千葉県が953円といずれも28円の上昇となり、全国平均でも28円と今回の引き上げ額は制度が始まって以来の最高額となっています。物価の上昇との比較や諸外国の最低賃金との比較はまたの機会に譲らせてもらうとして、最低賃金が都道府県によって違うのはなぜなのか疑問に思ったことはありませんでしょうか。

最高額は東京都の1,041円、最低額は高知県、沖縄県の820円とその差は221円にもなります。「都心に対して地方は時給が安いのは仕方ない」と漠然と納得してしまっていますが(もちろん全国一律賃金という意見もありますが)、家賃や土地などは都会と比べて安価だとしても、生活用品や水道光熱費が地方の方が安いなどという話は聞いたことがありません。1日8時間、月に20日勤務の月額ベースに換算した支給額は東京で166,560円、高知や沖縄で131,200円とその差は35,360円となり、これが例えば同じ広さ、同じ利便性のアパートを借りた時の差額と一致するのでしょうか?そもそも住民すべてが賃貸住宅に住んでいるわけではありませんので分譲や持ち家でも土地代が安いからといって上物の建物の建築費まで安い訳がなく、最低賃金の格差を生じる要因は別のところにあるようです。

都心と地方で賃金額に差が出る理由について、経済学では、企業活動が特定地域に集中して立地することで得られる便益である「集積の経済」が大都市の賃金を高くしていると考えられています。都心では交通網などのインフラが整備されていて利便性が良いため企業が集中し企業間の取引が円滑に行われるので生産性が高く、また能力の高い人材が集まっているため投資効率が良いことで都市部の企業が高い利潤をあげられるので、必然と高い賃金が払えるという理論だそうです。いまいちピンときませんが、例えば店舗への来客人数は都市部の方が当然多いでしょうから、それだけお店が儲かってアルバイト店員に高い賃金が払えると考えれば腑に落ちるでしょうか。となると、地方の賃金が低いのではなく、都市部の賃金が高いという認識は正しい捉え方なのかもしれません。

都市部の企業からしてみると最低賃金をそんなに上げられては困るといった声も聞きますが、今でも地方では経験できない価値のある経験と高い賃金を求めて都市部へ若者が集中しますし、もし全国一律賃金にしたとしても、生産性や効率の劣る地方の企業が雇用を維持できなくなるので失業者が増え雇用を創出している都市部に人が集まるというスパイラルは変わらないでしょう。

コロナ禍のなか、テレワークが急激に浸透し、もはや都会で暮らさず通勤電車に乗らずに仕事ができると地方に移住する人たちが増えています。しかし、もともと都市部で働き、そこの会社に属しながら高賃金のまま地方に仕事場を移しているだけであって、地方に住んでいる人が最初からそのような働き方ができるわけではありません。たびたびこのコラムで働き方の多様性をテーマにしてきましたが、それを享受できる、選択できるのは一度でも都市部で暮らし、仕事をした人に限られているのではないかと思うと、言われているほど最初から多様性が用意されているのではなく、連綿と続く普遍的な「普通」の働き方をしてからでないと実現しないのかもしれません。

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