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コラムvol.10 年間の祝祭日数と総労働時間

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コラムvol.10 年間の祝祭日数と総労働時間

2020年もそうでしたが、紙で印刷された2021年のカレンダーのほとんどが、7月の祝日表記が違っています。延期されたオリンピックの開会式に合わせて再度特例法として祝日を決める国会での審議が新型コロナのため進まず、12月に入ってようやく施行されたため印刷が間に合わなかった事が原因なのですが、8月や10月にも実際に印刷されたものと異なる日があるので混乱しますね。
ところで日本の祝日は多いと思いますか?少ないと思いますか?世界の祝日数と比較してみると日本は年間17日で第3位となっています。1位はタイの21日で仏教国としての宗教的な祭事などが多いからだそうです。しかし、まさか日本が3番目に多いとは意外ですね。
意外と言えば日本の2020年の年間の総労働時間数も1598時間と、韓国の1908時間、アメリカの1767時間よりも少ない時間になっていて驚きます。(OECD2020年統計より)
「なんだ、日本人はそんなに働き過ぎじゃないじゃないか」、「なぜ長時間労働問題解消に働き方改革だとか言われるのか」と思ってしまいますが、実際は色々と実態と違うところが多いようです。

祝日数が少なくても、例えばEU加盟国では労働法で全従業員に年間で最低でも4週間の休暇を取るよう決められており、年度の始めに労働者各個人で休みの予定を組んで誰かが休んでいる間は他の社員たちがサポートしあいながら仕事をするそうです。アメリカは法律で決められてはいませんが、子供の夏休みに合わせたり、移民が多い国なので母国に帰ったりする人が多いそうです。自由な国なりに長期休暇を取れる環境がありそうです。フランスは法律で最長5週間までの連続休暇を認める法律があるそうです。バカンスやバケーションといった言葉は日本語では一言で訳せない概念ですね。日本も最近になって年間5日の有給取得を義務化しましたが、世界最大級の旅行会社エクスペディアの日本語サイトエクスペディア・ジャパンが調査した2017年の世界の有給消化率は日本は50%と最下位だったそうです。付与されている休暇数の違いがあるので世界の半分しか休んでいないという意味ではありませんが、多少身体の具合が悪くても、台風が直撃しても大雪が降っても無理して出勤したり、だいぶ周囲の理解が得られるようになりましたが子供の行事を理由に休みを取りづらかったりと、職場の周りの雰囲気を読む必要があり、有給取得を理解してくれると思える上司のいる割合もこの統計では日本は最下位でした。長期の有給取得による旅行なんて「アイツは仕事に対する責任感がないのか」と周囲から後ろ指をさされても平気な神経を持っていないと出来ない環境下で毎日働いているということになりますよね。バカンスを楽しむ欧米人は旅行先で割とダラダラした毎日を送ることで非日常感を満喫するそうですが、日本は祝日が多くても、一部の人たちを除いて他の人も休みでどの観光地も混雑し、綿密な計画のもと分単位で名勝を巡る弾丸ツアーのような休み方しか出来ない人がほとんどで、諸外国と比べて有意義に過ごせているのか疑問です。もしかするとカレンダー上に決められたいわゆる「旗日」がいくら増えてもそれ以外の日が休みにくくなるという逆効果を生み出していることになっているのかもしれません。

次に総労働時間についてですが、先に述べた時間はパートタイム労働者の労働時間も含まれている平均の数字なのです。厚生労働省の毎月勤労統計から読み解くと、フルタイム労働者の労働時間は年間2100時間前後と毎年ほぼ横ばいで、まったく減る傾向がありません。この20年ほどの間でパートタイム労働者の割合は約15%から30%へと倍増しており、これらの人たちの短い労働時間と人数がOECDのデータには含まれているため年間の総労働時間を押し下げているだけなのです。

昔から「雇用の調整弁」としてパートタイム労働者は位置付けられ、景気の良いときにはその数を増やし、景気が悪いと減らすという日本独特の労使関係が続いて来ました。不安定な景気変動は更にその揺れ幅が大きくなり、いわゆる正社員を増やしづらくなっているため、少子高齢化による労働人口減少も相まってますますパートタイム労働者に頼らざるを得なくなっています。責任あるポジションや権限を与えられる事は稀でしょうから、結局肝心な仕事の負担は正社員にかかってくる訳です。そして一向に労働時間は減らないといった負のスパイラルから抜け出せなくなっているのでしょう。

日本という国は資源が少ないため、輸入した物を独自の技術力の高さで加工し輸出して経済発展を遂げて来ました。そこにはどうしても勤勉さや横並び主義、長時間労働といったものが裏付けされてしまいます。それにより戦後世界第2位の経済大国まで登りつめたと言っても過言ではありません。しかしその地位ももはや中国に抜かれ、これから発展してくるアジア諸国にもいずれ抜かれてしまうでしょう。
ブランドやIT技術など目に見えない付加価値創造に主体を置いて利益を生み出す企業はまだまだ数える程しかありませんし、どちらかというと日本人の国民性からすると苦手分野なのかもしれません。

子育て世代や定年後の高齢者がパートタイムで働ける機会が増えていることは望ましいことでしょう。しかし、やはりその働き方の不確実性からフルタイム労働者が全幅の信頼を持って仕事を任せられるかというと、まだまだ日本は制度的にも意識的にも習熟しているとは言えません。法律で休みを増やしたり制度で労働時間を減らしたりすることも大事ですが、ワークシェアリングを含めた働き方の多様性に対応出来る"意識づけ"にも力を入れ、フルタイム労働者至上主義から脱却し、再び日本が得意とする分野で世界と闘っていくために、その労働力を活用していく新たな仕組みを作り出すことが今まさに必要とされているのではないでしょうか?

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